【フランス】増え続けるパリの自転車事情まとめ【旅行者OK】
今回のコロナ禍を通じ、パリでは以前にも増して自転車利用を推進しようとしていく流れが加速しています。自転車の利用を加速させるべく、一時的な自転車道も続々誕生しています。しかし、この流れは今回の新型コロナウイルスの流行だけが唯一の契機だったわけではありません。そこで、今回は、パリの自転車事情をわかりやすくまとめてみました。
パリの自転車事情の推移
色々と調べていくと、パリで自転車道が整備されることとなった契機の1つに1995年の交通機関のストライキが挙げられるようです。当時のパリは交通手段と言えば自家用車かメトロ、バスに徒歩といった選択肢しかなかったようで、メトロとバスが一斉にストップした際にはパリ中が大混乱に陥りました。このストライキは3週間にわたって続き、皆が車で通勤しようとしたためにパリ中が大渋滞に陥ったとのことでした。Wikipedia(フランス語版)などにも詳細は記載されていますが、ここでは本筋ではないので1995年のストライキの話は省略します。
さて、このストライキにおける公共交通機関の大混乱に加え、地球温暖化対策が叫ばれていたという時代的な背景もあり、1996年にパリ市から自転車道計画が出されました。この計画はその後市長が交代しても脈々と受け継がれてきており、反対意見も多くありますが次々と整備が進められています。
自転車道の整備にあたり、取られている手段は主に2つ。1つ目は車道を減らし、自転車専用のレーンを作るというもので、2つ目はバス専用レーンの拡幅です。元々パリのバスレーンは幅3.8mだったようですが、それを4.5mに拡幅した上でバスが自転車を追い抜けるようにし、バスやタクシーの他に自転車もバスレーンを走行できるようにするという形で自転車道を整備することで車道への影響を抑えようとしている区間も多いです。
これらは毎年少しずつ工事が行われ、セーヌ川沿いの自転車道やリヴォリ通りなど主要な通りを含め、現在約1000kmの自転車道ネットワークが整備されました。新型コロナウイルスに伴う外出制限解除後は、それ以前に比べリヴォリ通りの自転車交通量が倍増したようです。
近年ではVelopolitainと呼ばれる自転車向け高速レーンも提案され、一部整備も行われています。自転車利用の快適性はどんどん上がっています。

反面、整備が行われると車道が削られる場合がほとんどで、元々両方向に走れていたのが一方通行になるなど、車からしたら非常に迷惑な整備になっています。工事中はさらにひどく、交通渋滞は激しくなっており、不満を訴えている人もかなり多いです。


近年の自転車普及への取り組み
また、これら自転車道の整備のほかにも自転車利用を促進するためにいくつかの取り組みが行われています。その1つが自転車の新規購入補助。パリ市の場合、電動自転車やかご付きの自転車の購入で400ユーロから600ユーロの補助金が出ることとなっています。その他、大気汚染物質を大量に排出する車(Crit'airが4あるいは5の車)を放棄する条件のもと、自転車購入に補助が出るという仕組みも用意されています。
その他、国家レベルのCoup de Pouce Velo計画とよばれるフランス環境連帯移行省の計画があります。この計画では、①利用されずに眠っている自転車の修理・整備費を補助(最大50ユーロ/台) ②自転車に安全に乗るための無料講習の実施(全額政府負担) ③自治体などによる仮設駐輪場の設置費を最大60%補助 の3つの補助が用意されています。
シェアサービスも普及が進んでいます。パリの場合はVelibというサービスがあり、多くの人に利用されています。2007年からサービスが始まっており現在設置されているステーションの数はおよそ1400。パリ市及び近郊のあちらこちらに用意されており、利用者をまちなかで見かけることも多いです。


料金もかなりお手頃。1日5ユーロあるいは1週間15ユーロで一度に5台まで、1回の利用につき30分まで使えるようになっています(その後30分おきに1ユーロ追加)。別料金にはなりますが電動自転車も用意されており(最初の30分が+1ユーロ、その後30分おきに+2ユーロ)、旅行者でも使いやすいです。
もちろん在住者向けの料金も用意されており、こちらは月3.10ユーロで最初30分乗り放題と格安です(12ヶ月の契約が必要)。2020年9月には学生向けのプロモーションも行われており、最大半額で契約できるようです。圧倒的にお得ですね。

Velibの詳しい使い方については後日別の記事で詳しく書こうと思います。
これらの取り組みを受け、パリでの自転車利用者は大幅に増加しています。こちらのサイトによれば、2001年から2010年で114%の増加、2010年から2018年でも3割ほど自転車移動は増えています。それでも、現在の自転車のモビリティシェアは全体の2%程度。これを15%程度まであげるべく、これからもパリの自転車普及のための取り組みは続いていきます。
パリで自転車に乗る怖さ
一方、道路網が充実しているとは言えないパリ中心部の道は渋滞がひどく、特にラッシュアワーはよくクラクションがなっています。複数の道路が集まる主要な環状交差点(フランス語でロン・ポワン、英語でラウンドアバウト)を中心に危険な状況は続いています。また、車道と歩道を行ったり来たりする、信号を守らないなど交通マナーの悪い自転車も多く、いつ事故が起きてもおかしくありません。

そして、個人的に思う最大の問題は駐輪場の不足。アムステルダムやコペンハーゲンなどの都市と違い、パリでは自転車の駐輪場をまちなかで見かけることがあまりありません。また、駐輪場があったとしても止めている間にタイヤなどが盗難に遭うケースも多いようです。このため、オフィスや自宅の内部に自転車を持ち込む人も多いです。
やっぱり自転車は便利
パリで自転車に乗るのは少し怖い、という話をしてしまいましたが、それでも便利な移動手段であることは事実。中心部は坂が少なく(モンマルトルを除く)、主要な観光地はある程度コンパクトにまとまっているため、自転車で移動しやすい条件は整っており、観光客でも使いやすいと言えます。パリに来られた際は一度使ってみるのもいいでしょう。