【最大警戒ゾーン】パリの状況を解説【新型コロナウイルス】
5日月曜日、パリ市は新たな新型コロナウイルス対策のための規制内容を発表しました。パリ市の公式サイトやLe Mondeの記事、それに日本大使館から送られてきたメールをもとに内容をお伝えしようと思います。
なお、この記事は実質的に前回の記事の続きとなってます。先週までの状況についてまとまってるので、まだ読まれていない方はぜひそちらの記事も御覧ください。また、ロックダウン中など、7月までの状況も別の記事にまとめてあるので、そちらもぜひ御覧ください。
開き続けるレストラン
前回の記事で、新型コロナウイルス警戒ゾーンが3段階に分かれており、パリ市は真ん中の警戒強化ゾーンに分類されたことをお伝えしました。しかし、その後も状況は悪化を続けており、先週中には警戒最大化ゾーンの基準値を超えました。
これを受け、パリ市及び周辺の3県(セーヌ・サン・ドニ、オー・ド・セーヌ、ヴァル・ド・マルヌ)が警戒最大化ゾーンへと移行することが5日に発表されました。
具体的な措置としては以下があげられます。
- 集会
- 1000人以上のイベントの禁止(裏方やスタッフなど、イベントの運営に必要な人は人数に含まれない)
- 公道や公園、庭園における10人以上の集会の禁止((届け出がなされた)デモ、葬式、マルシェ、仕事上の人の集まり(映画・テレビの撮影、ガイドツアー、工事現場)、食材配達などは禁止されない)
- バー、レストラン、商業施設など
- バーは6日朝から閉鎖
- アルコールの販売・公道での飲酒は22時以降禁止
- ※レストランは新しい感染対策規定(テーブル間の距離は1m以上、1つのテーブルは最大(以前の10人までではなく)6人まで、食事中以外のマスクの着用)の実施を徹底した上で営業可能
- 一般来訪者を受け入れる施設での学生の夜のパーティー、祝祭、家族の集まりは禁止
- 市役所や宗教施設での結婚式は可能(結婚パーティーは禁止)
- クラブ、ダンスホールは閉鎖
- 展示会、見本市、サロンなどは禁止
- 文化施設(劇場、映画館など)や図書館・メディア資料館は開館可能(入場人数の制限や一方通行の徹底などの対策の徹底が条件)
- 大規模商業施設はお客さん1人あたり4㎡以上を確保
- スポーツ
- ジム、プールは閉鎖(秋休みに入るため未成年者の受入れは可能)
- 屋外施設でのスポーツイベントは1000人未満かつ収容人数の50%以下の条件の下で可能
- 高齢者施設
- 面会は予約者に限り最大2人まで
- 団体での外出は延期。個人での外出もできるだけ制限することを推奨
- PCRテスト強化
特に注目するべきはレストランの営業が引き続き認められることでしょう。前回警戒最大化ゾーンに指定されたエクサンプロバンス=マルセイユ都市圏ではレストランの閉鎖が命じられていたので、パリでもレストランの閉鎖が命じられるものと思われていましたが、レストラン経営者を中心とする激しい反対に押し切られた格好と言えます。
エクサンプロバンス=マルセイユ都市圏もパリでの動きに追従し、今週中には再びレストランの営業が再開されるものと思われます。一方、バーは完全なる閉鎖を認められており、対応が二転三転していることもあって反発は避けられないでしょう。
その他、大勢の人が集まるイベントは引き続き禁止・ないし規模を縮小しての実行が義務付けられています。これらの措置は法的拘束力を持ち、違反した場合には罰金を支払うことになると思われますが、今週までの様子を見ていてもパリ県全域でこれらの措置を徹底できるとはとても思えず、実効力を持つかは疑問です。

ロックダウンという表現は不適切?
このような規制強化の報道を受け、一部報道では「パリが再度ロックダウンされる」と伝えられていたかと思いますが、個人的にはこの表現には誤りがあると思います。ロックダウンは都市封鎖とも訳され、移動の自由を制限する状態のことだと思っているのですが、この基準に当てはめて考えると今回の措置はロックダウンには該当しません。3月中旬から5月上旬にかけての期間は外出が基本的に禁止され、食料品の買い物や病院の受診など、日常生活を送る上で必要最低限の外出のみが外出理由宣誓書の携帯とともに認められていました。
一方、今回の措置ではバーやジム・プールなど、閉鎖が命じられている施設の種類も多く、生活が制限されている部分は否めないものの移動の自由は引き続き保証されており、マスクの着用の上であれば基本的に外出することに問題はありません。再度のロックダウンという言葉のみが独り歩きしているように思われますが、その実態は半年前と現在とでは大きく異なっているということを理解していただければと思います。
今後の状況
2週間おきにこの状況は見直され、適用される措置が見直されるとのことなので、最低でも2週間は上にあげたような措置が継続することとなります。半年前の外出制限がある程度遵守されていた中で効果が出るのに時間がかかり、2ヶ月間継続したことを考えると、実行力に疑問がつく今回の措置の効果が出るのにはかなりの時間がかかると考えられます。
このため、実際には数ヶ月単位で今回の措置が実施される可能性も高いと思われます。経済活動への影響は少なくないと考えられ、今後の政治判断からは目が離せない状況が続きそうです。