フランスの祝日のお話~一味違う2020年の祝日~

2020-10-05

今日はフランスの祝日についてお話したいと思います。

日本よりも少ない祝日

さて、まずはフランスにはどんな祝日があるのかをご紹介します。

祝祭日日程(2020年)
Jour de l'an (元日)1月1日
Lundi de Pâques* (復活祭の翌日の月曜日)4月13日
Fête du Travail (メーデー )5月1日
Victoire du 8 mais 1945 (1945年5月戦勝記念日)5月8日
Ascention* (昇天祭)5月21日
Lundi de Pentecôte* (聖霊降臨祭の翌日の月曜日)6月1日
Fête Nationale (革命記念日)7月14日
Assomption (聖母被昇天祭)8月15日
Toussaint(諸聖人の日)11月1日
Armistice 1918 (1918年休戦記念日)11月11日
Noël (クリスマス)12月25日
在日フランス大使館のページも元に作成。*で示されているものは移動祝日で、最大1ヶ月前後動きます。

日本の祝祭日は例年16日(振替休日が無い時)で、改元のあった2019年には19日であったことも考えると、フランスの祝日の日数(11日)は少なく思えます。また、11日の祝日の内、4月から8月に7日が集中するなど偏りが多く、元日の後は3ヶ月、8月15日の後は2ヶ月半祝日がないことがわかります。

それでも、フランス人には休みが少ないという感覚はないようです。というのも、正社員の場合は有給休暇が5週間以上取得できるからです。5週間以上という書き方をしたのは残業代をもらわない代わりに有給休暇の日数を増やすことができるという制度が存在するためで、大半のフランス人はこの制度を使って年間6~7週間程度の有給休暇を取得するようです。

学生の場合も2ヶ月に1週間程度休みがあるので、実際にはもう少し休みは頻繁にあります。

移動祝日はキリスト教由来のもののみ

日本では月曜日に固定されている祝日が複数あります(1月第2月曜日の成人の日、7月第3月曜日の海の日、9月第3月曜日の敬老の日、10月第2月曜日のスポーツの日)が、フランスにも月曜日に固定されている祝日が2日あります。これらはキリスト教に由来するものです。復活祭の日程が年によって異なるため、その日を基準としている祝日は日程が変化します。復活祭の日程は春分の日を基準とし、更に月の満ち欠けが関連するということなので、年によって1ヶ月程度前後します。

昇天祭も含めて3日ある移動祝日、聖母被昇天祭、諸聖人の日、クリスマスをすべて考えると、フランスの祝日の半分以上にあたる6日がキリスト教由来のものとなります。現在のフランスは宗教の自由が定められており、完全なる政教分離が原則となっていますが。伝統的にはフランスはカトリックの国なので、その影響を感じることができます。

Journée de solidarité (連帯の日)

さて、フランスでは11日祝日があると述べましたが、このうち1日は働くこととなります。それがJournée de solidarité envers les personnes âgées(年長者への連帯の日)で、2004年からこの制度が始められました。

企業ごとに11日の祝日のうちある1日(メーデーを除く)を選ぶことができ、その1日は全ての雇用者が無休で働くこととなります。また企業は一定の出資金を国に支払うこととなっています。イメージとしては、1日働いた分の給料が全て国に寄付されるといった形でしょうか。

このようにして集められたお金は、高齢者や障害者の支援のために使われることとなっています。カトリックの影響か、特に年齢層が高めの人は弱者に手を差し出すことが多く、そのような背景からJournée de solidaritéは受け入れられているように思えます。多くの会社ではLundi de Pentecôte* (聖霊降臨祭の翌日の月曜日)がこの日に当てられているようですが企業によって異なり、例えば僕の通っていた語学学校では8月15日(聖母被昇天祭)の日が割り当てられていました。夏休み期間中は語学学校の学生が他の時期よりも多いというのがその理由だそうです。

こんな事情もあってか、フランスのスーパーなどは営業する祝日と営業しない祝日があります。例えば、近所のスーパーは5月1日(メーデー)は休みでしたが、5月8日(戦勝記念日)は通常通り営業していました。このため、お店の営業時間が書いてある場合でも祝祭日( Jours fériés )という記載はなく、1週間前くらいになると張り紙がされるというスタイルが多いように思います。

COVID-19による外出制限令の影響

さて、ここまでは例年通りの祝日のお話。ここからは、外出制限の最中だったメーデーと戦勝記念日がどのような感じだったのかについて、YouTubeで見つけた動画を交えながらお話したいと思います。

近年激しさを増していたメーデー

まずはメーデーから。元々メーデーは労働者が自らの権利を訴える日で、大規模なデモが行われるのが通例だったようですが、近年のメーデーは « Gilletes jaunes (ジレ・ジョーヌ、黄色いベスト運動) » と合わさり特に暴力的なデモが行われていたようです。

Le Mondeによる2019年のパリのメーデーの様子。非常に緊迫した雰囲気です。

ところが、今年はCOVID-19 (新型コロナウイルス)流行の影響で外出制限令が発令。大規模な集会など論外で、このようなデモは行われないように思われました。

それでも、インターネット上では一部の過激派による集会の呼びかけがったようで、パリのレピュブリック広場ではプラカードや横断幕などを持った複数の抗議者が現れたようです。このため、下の動画の通り警察が外出証明書の取り締まりを行っていたようです。

2020年5月1日のパリの様子。外出制限中にも関わらず抗議活動を行っていた人々を警察が取り押さえています。

また、ニュースによればこの他にも自宅のベランダに横断幕をかけたりするなど、自宅からの抗議活動を呼びかけていた団体もあったようで、デモを通じて自身の権利を主張する、というフランス人の精神は外出制限の状況下でも健在なようでした。

大幅に縮小された戦勝記念日のセレモニー

さて、続いては5月8日の戦勝記念日です。毎年5月8日は大規模なセレモニーが行われているフランスですが、その規模が今年は大幅に縮小されました。

大統領府が公式に発表しているセレモニーの様子の動画をご紹介します。1つ目が2019年(74周年)、2つ目が2020年(75周年)のものとなります。

2019年のセレモニーの様子
2020年のセレモニーの様子

早送りしながら見るだけでも今年は明らかにセレモニーに参加している人の数が少なく、音楽の音量も小さいです。また、開始15分前後のシーンを確認すると、それぞれの参加者が間隔を開けて立っていることがわかります。このまま状況が収まらなければ、7月14日の革命記念日のセレモニーも大幅に縮小されたものとなりそうです。

始まったばかりの外出制限解除

パリでは5月11日から部分的に外出制限が解除されましたが、パリ市内に行ってみた友人によるとショッピングセンターを含め殆どのお店が閉まっており、人もいつもと比べれば全然いなかったということでした。

Forum des halles
パリ中心部にあるショッピングセンター、Forum des Hallesのピロティ。やっているお店はなく、いつもある活気もありません。
パリのまちなか
パリの日本食スーパー、京子食品の前。やっているお店はほとんどなく、タピオカ屋のみが営業していたとのことでした。在庫の関係などもあるのでしょうか。

ニュースによれば、電車内でのマスク着用が義務付けられたこともあり、違反者には罰金も課されるということもあって95%以上の乗客がマスクを着用していたようです(最初数日は猶予期間として罰金の適用はなし)。とはいえ、特に通勤時間帯は利用者が多く、1m以上の間隔を開けるというのは不可能だったようで、特に混雑が見られた路線は運行本数を通常通りに戻そうとしているようです。