【無料公開】【1年で2日だけ】ヨーロッパ文化遺産の日に出かけてきた【元老院の訪問記】

2020-10-05

今月は新型コロナウイルスの影響で延期になったスポーツイベントが多数実施されました。例年7月に行われている自転車レース、ツール・ド・フランスは9月20日にパリでの全体フィニッシュを迎えましたし、ル・マン24時間耐久レースも9月19日に行われたようです。9月21日からはテニスの全仏オープン(ローラン・ギャロス)も行われるようですが、新型コロナウイルスの感染も広がっており、1日で1万3000人以上の感染が確認され第2波の真っ只中です。

さて、そんな9月でしたが、9月の19・20日は第37回のヨーロッパ文化遺産の日(Journées européennes du patrimoine)でした。今回はその機会を利用して、リュクサンブール宮殿の中にある元老院(Sénat)の見学に行ってきたので、その訪問記を書いていこうと思います。

ヨーロッパ文化遺産の日って何?

Wikipediaによれば「Europe: a common heritage」のモットーの下、50カ国が加盟するヨーロッパ文化会議を含む欧州評議会と欧州委員会の合同イベントとのことで、毎年9月第3週の週末に行われています。

元々はフランスの文化大臣が呼びかけて国内イベントとして始まったようですが、徐々に参加国が増えてきているようです。イベントに参加している国では美術館や博物館などの数々の文化施設に無料、あるいは割引で入場できるようになります。

また、普段は見学できない場所が特別に公開される場合も多くフランスでは1万5000を超える歴史的建造物が見学可能になります。モン・サン・ミッシェルなど、普段から見学できる場所でも通常の見学ルートに含まれない場所が特別に開放されるとあり、非常に人気があります。

2020年は特別な年

2020年は新型コロナウイルス流行の影響があったため、例年は一般開放をしている施設でも見学を取りやめた施設も多かったですし、フランス国内でも特に流行の激しかったリヨンやボルドーなどの一部の都市では全ての施設が一般公開を直前に取りやめたようですが、パリでは見学が可能な施設が複数あったので、今回は元老院(Sénat)の見学に行ってきました。

大統領府(Élysée)やパリ市役所(Hôtel de Ville)などは入場できる人数を制限する都合上予約が必要となっており(おそらく今年から)、気がついたときには予約が全て埋まっていたのですが、元老院は予約システムがなく、並べば見学ができるとのことだったので土曜日の朝に行きました。

リュクサンブール宮殿にある元老院の見学

見学開始時刻の9時ちょうどについたのですがすでに大勢の人が並んでおり、結果的に1時間半並ぶことになりましたが、こちらの入場列は地面のサインや植栽などを用いて人が密集しすぎないような工夫がなされており、新型コロナウイルスの感染防止策が取られていました。

1m置きに引かれた待機列の黄色い線と、列同士を話すために設置された植栽やテープ。並んでいる人同士の距離はきちんと確保されていました。

内部は現在も使われている場所なので、案内用のパネルなどはほぼ用意されておらず、小さなパンフレットにある案内を読むか現場の係員の方に質問をするかのどちらかでそれぞれの展示の説明を得ることとなります。パンフレットはフランス語だけでなく英語のものも用意されていました

ここからは内部の写真をご覧いただこうと思います。荷物検査を経て南側の入口から入場し、最初の目玉は金の書物の部屋。1817年にBaragueyという建築家によって装飾がなされたこちらの部屋はあまり大きな部屋ではないものの、金の装飾が非常に美しい印象的な部屋でした。

同時に12人までしか入場できないようになっており、その分写真も撮りやすかったです。

隣には元老院の副議長室があります。歴史を感じる部屋の中に新しいMacのパソコンが置いてあり、コントラストが非常に印象的でした。

後ろにいたフランス人はFAXが未だにおいてあるよ、などと発言をしていました。フランスではFAXを目にすることはほとんどないように思いますが、日本では未だに使われている場所も多いような気がします。個人的に不思議なことの1つです。

副議長室は非常に大きかったです。

中庭を通った後、René Monoryの部屋を通ります。1870年から1940年までのフランス第三共和政の際には会議室として使われていた部屋で、近年マルチメディア室としてリフォームされました。

こちらの部屋の裏手にある階段には金色のエレベーターが設置されており、リフォームの際には過去に施された金色の装飾との相性に注意が払われていたことが伺えました。

マルチメディア室

続いて上の階に上がると、Victor Hugoの部屋を通り抜けて会議室に着きます。幅10.6m、奥行き57m、高さ11mの非常に大きな空間で、1854年に3つの部屋を1つにする形で作られた部屋で、非常に派手な金の装飾やシャンデリアが印象的です。ナポレオン1世が使っていた椅子なども展示されていました。

奥行き57mの巨大な会議室。ヴェルサイユ宮殿を少し思い出しました。

すぐ横には議場があります。1836年から1841年の間に作られたこちらの議場は現在も使われており、各席にはそれぞれの席を使用している議員の名前が記されていました。席は所属政党ごとに割り振られています。

メインの議場のすぐ裏手には図書館があります。説明されていた係員の方によると小説や漫画以外の全てのジャンルの本があるということでした。また、ナポレオンがエジプトに出征した際の記録なども残されており、それらを収納する専用の棚も設置されています。

図書館は高さも奥行きもあり、歴史も感じられる空間。リュクサンブール庭園の眺めもきれいです。

その後、議長室や女王の寝室と呼ばれる部屋を通り、メインの建物の見学は終了。建物を出る直前に名誉の階段(Escalier d'honneur)を通ります。カーペットが敷き詰められた階段は天井も高く非常に立派な空間となっており、その名に恥じない空間となっていました。

何故か少し斜めになってしまっていますが、名誉の階段。非常に立派です。

その後は一度外に出て、別の建物に移動します。Le petit Luxembourgと呼ばれるこちらの建物では、最初に議長の書斎を見学します。非常に大きな絵画が飾られている部屋の中にパソコンが置いてあり、こちらもそのコントラストが非常に印象的です。

議長の書斎

また、女王の礼拝堂と呼ばれる金色の装飾が美しい礼拝堂もあります。礼拝堂がここまで豪華に装飾されているのはあまり見たことがないので、今回の見学の中でもかなり印象的でした。

女王の礼拝堂

なお、こちらの部屋に入る前には非常に印象的な階段がありましたが、これを登ることはできませんでした。

立派な階段

このあともいくつか見学できる部屋は残っていましたが、今までに紹介した部屋と比べるとややインパクトが小さいのでこちらの記事では割愛します。ゆっくり写真を撮りながら全体を周り、見学時間は1時間から1時間半ほど。中々見学できない場所をいっぺんに見ることができる機会となったので、非常に面白かったです。

おわりに

このような形で普段はお目にかかれない歴史的建造物の見学ができるヨーロッパ文化遺産の日。例年は待機列が3時間以上に並ぶこともザラなようで、たくさんの施設を見学するのは正直難しいです。しかし、このような施設を1つ見られるだけでも非常に価値のあることだと思います。在住者や仕事で頻繁に来られる場合を除き、しょっちゅうパリに来るというのも難しいことなので、もし可能であれば貴重な1回の滞在を9月第3週に合わせることをおすすめします。