【留学】【グランゼコール】国立土木学校(ENPC)ってどんなところ?経験も踏まえて紹介!

2020-10-05

外出制限が始まってから3週間になりますが、今日は833名の方が亡くなられたようです…(フランスでは過去最多)。

今までは外出証明書は紙媒体で持っていなければならなかったのですが、今日からスマートフォンに保存できるようになったので、少しだけ楽になりました。

国立土木学校の沿革

さて、今回は僕が今留学している国立土木学校についてお話していきたいと思います。国立土木学校はルイ15世の勅令により1747年に作られた、フランスで最初のグランゼコールです。グランゼコールって何?という方は以下の記事をチェックしてみてください。

日本の場合、最初の大学である東京大学の創立が1877年なので、それより140年も前に作られたことになります。非常に歴史がある教育機関です。元はと言えば、近代化の過程の中で必要とされた土木分野のプロフェッショナルの養成のために創立されました。卒業生にはコーシーやコリオリ、ナビエ、ベクレルなど科学界の偉人も名を連ね、ノーベル賞受賞者も複数輩出しています。

なお、元々はパリ市内にキャンパスがあったのですが、パリの高等教育機関の郊外化の流れの中、2000年前後にMarne-la-Valléeという郊外(パリ市内から東に2-30分くらい)にキャンパスを移転しました。このあたりはニュータウン開発の一貫として開発が行われた地域で、パリ市内のような歴史的な建物などはありません。もう少し郊外まで行けばアウトレットやヨーロッパ唯一のディズニーランドなどもあります。

近年は国内外の機関との提携を強めており、ParisTechというグランゼコール同盟のようなものに加盟しています(他にはエコール・ポリテクニーク、パリ国立高等鉱業学校なども加盟)。このため、元々はÉcole nationale des ponts et chausséesという名前でしたが、近年はÉcole des Ponts ParisTechと呼ばれることが多いです。

ENPCの建物
少し天気が悪いですが、国立土木学校のメインの建物。全面ガラス張りの建物が6つあり、それらがすべて真ん中の大きなホールにつながるという特殊な構造をしています(外出制限が終わったらもう少しわかりやすい写真を撮ってきます)。
ENPC敷地内
キャンパス内の通路。左手の変わった形をした建物にはジムや食堂などがある他、今年からUniversité Gustave-Eiffelという新しい大学ができました(元々は研究所でした)。

国立土木学校で勉強できること

そんな国立土木学校ですが、以前の記事で紹介した(準備学級での2年のカリキュラムと合わせて)3年のカリキュラムを修了すると« Diplôme d’ingénieur » (直訳すると「エンジニア」の学位)がもらえる学科が6つあります。

  • Génie Civil et Construction (土木工学・建築)
  • Ville, Environnement et Transport (都市・環境・交通)
  • Génie Mécanique et Matériaux (機械工学・材料工学)
  • Génie Industrielle (産業工学)
  • Ingénierie Mathématique et Informatique (応用数学・情報工学)
  • Sciences Économique, Gestion et Finance (経済・ファイナンス)

準備学級から国立土木学校に入学してくる学生はおそらく各学年200-250人程度だと思うのですが、彼らは3年の課程のうちの1年目は6つの学科のどこに行くかは決めておらず、どこの学科に進む学生に対しても同じようなカリキュラムが用意されています。学科に細分化されていくのは2年目以降で、留学生やフランス国内の他のグランゼコールとのダブリディグリーの学生はこのタイミングで彼らに合流することになります。このため、2年目・3年目の学生は1年目の学生の倍近くの人数がいます。留学生向けにはフランス語の授業が開講されており、かなり丁寧な指導を受けることができるなど、サポートも手厚いです。

また、この他に通常の修士課程のコースが20個前後、社会人向けの大学院コースが10個前後、博士課程コースが4つ設置されている(いずれも上記6つの学科のいずれかに関連があります)他、d.school ParisやMBAなども設置されており、在籍している学生は多岐に渡ります。一部には英語のみで授業が行われるコースもあるようですが、エンジニアの学位がもらえる上記の6つの学科については授業は原則フランス語で行われます(語学の授業、外国人の外部講師が来る授業などは除く)。

なお、2年目と3年目の間(留学生など2年で卒業する学生の場合は1年目と2年目の間)にインターンシップをすることがカリキュラムに組み込まれており、これを行わないと学位を取得することができません。通常は6-8月の間に12週間以上の短期インターンシップをすることが要件となっていますが、希望者はこれを43週間以上の長期インターンシップに変更することができます(1年の休学を含む)。様々な方のお話を伺うと、フランス人の学生は8割程度がこの長期インターンシップを選択するようです。

日本人からしたら12週間のインターンシップも十分長いのですが、フランス人的にはそれでは短い、となるようです。そもそものインターンシップに対する考え方が全く違うので、このあたりのお話はまた機会があれば紹介しようと思います。

授業の特徴

僕は上記の6つの学科のうち、Ville, Environnement et Tranport(都市・環境・交通)という学科に所属しています。

この学科は準備学級を経て入学してきた学生が比較的少なく、留学生やフランスの他の学校とのダブリディグリーで入学してきた学生が多数派です。留学生は主に土木・環境・交通分野のバックグラウンドを持つ学生が多いほか、フランス人のダブルディグリー生は他の分野(物理や化学など)のバックグラウンドを持つ学生が多いので、学生の多様性があると言えるでしょう。ちなみに、本学科の今年の留学生には日本人のほかブラジル人、スペイン人、中国人、レバノン人がいます。

講義は主に同じ敷地内にある研究施設の研究者やビジネス分野で活躍している実務家の方々によって行われます。少人数の講義が多く、学生側も授業に積極的に参加していくことが重視されることが多いです。

国立土木学校の他の学科では非常に数式を重視した講義・議論などが多いようなのですがこの学科は少し例外的で、数学力はあまり要求されないことが多いです。一方、グループワークやディスカッションが非常に多く、フランス語力が非常に要求されます。

母国語が同じラテン系言語であるブラジル人やスペイン人はフランス語力がすごいスピードで伸びている他、レバノン人は歴史的経緯から母国でフランス語教育を受けているのでフランス語で苦労している印象はあまりないのですが、日本人と中国人は常に苦しめられています。

日々の学校生活の様子についてはまた別の記事でご紹介します!