【職業別】コロナウイルス対策マニュアル~フランス版~
ここ最近は暑い日が続いている一方で、マスクの着用は様々なところで義務付けられており、コロナウイルス対策と熱中症対策の両立が課題になっています。
職業別に用意されたコロナウイルス対策マニュアル
さて、今回はフランス政府が公開している、就労時のコロナウイルス対策マニュアルの内容を一部紹介したいと思います。外出制限の解除に向けて準備が進められたマニュアルとなっており、4月20日以降こちらのページで公開されています。その数は少しずつ増えていき、現在は100近くあります。フランス語のみならず、一部のマニュアルはスペイン語やアラビア語などでも公開されており、このマニュアルに対するフランス政府の本気度も伺えます。
原則的に職業別になっているのですが、障害者向けのマニュアルなど全ての職業に対して当てはまるものも用意されています。
一例紹介!~パン屋の場合~
全てを紹介するわけにもいかないので、今回は一例としてパン屋向けのマニュアルがどのようなものになっているかを紹介してみようと思います。

1ページ目では一般的な注意として、どのような感染経路があり得るかについて解説しています。1m以下での他人との接触には鼻水やつばのしずくを通じた感染のリスクがあること、ウイルスは陳列棚や箱などの表面で数時間から数日生存している可能性があること、手を洗わないと感染リスクが高まること、手を顔に近づけると感染リスクが上がることなどが解説されています。

2ページ目ではこのマニュアルの目的が解説されています。感染のリスクを下げること、避けられないリスクについて知ること、有効な感染対策を解説することがあげられています。
また、組織全体として気をつけるべきことなどもまとめられています。可能な場合はテレワークを積極的に導入すること、テレワークができない場合は時差勤務を取り入れたりソーシャルディスタンスを確保すること、列を作るときは1人につき4平方メートルの空間を確保することが取るべき対策としてまとめられており、これらの対策が十分に確保できない場合はマスクを着用するなどの個人レベルの対策によって補われるべきであると書かれています。逆に言えば、このマニュアルが公開された4月の時点では、ソーシャルディスタンスを確保できていればマスクを着用する必要はないとされていたということになります。8月1日現在は屋内の公共空間でマスクの着用が義務となっていることを考えると大きな変化があったとわかります。
フランスをはじめ、ヨーロッパの国々ではマスクをつける習慣はありませんでしたし、マスクの着用による感染防止効果が疑問視されていた時期でもあったので、この半年でヨーロッパでのマスクに対する認識が大きく変わったことが伺えます。
ページの右上では、定期的に手を洗ったりアルコール消毒をすること、鼻や口のまわりを触らないこと、せきやくしゃみは肘に向かってすること、3時間に1回、15分の換気をすること、手で触れるものは定期的に掃除や消毒をすることなど、基本的な感染対策についてもまとめられています。また、右下ではこれらの感染対策の取り組みの導入により、障害を持っている人などハンディキャップのある人の勤務が妨げられないように注意するよう呼びかけられています。


3/4ページ目では準備・実行・確認の3つの段階にわけて具体的にどのような対策があるのか、ということを解説しています。
まずは準備の段階。入口のドアに感染対策を呼びかけるポスターを貼る、清掃・消毒計画を策定する、使用前・使用後に消毒を呼びかけるポスターを貼る、冷水機の使用を停止する、アルコール消毒液や石鹸などを準備する、必要な道具は各個人に支給する(複数人で共有しない)といったことが書かれています。
また、実際にお客さんが立ち入る売り場では、入口と出口をわけ、一方通行にすることでお客さん同士の接触を減らす、ソーシャルディスタンスを促すべく床に目印を貼る、可能であればレジ専任の人を用意する(お金を触った手でパンを触らないようにするため)、タッチ決済のクレジットカードを優先的に使用する、現金の受け渡しの際は手と手が触れないようにする、お客さんとの間に透明なシェルターを設置する、売り物は全てお客さんの手の届かないところに配置する、換気のためにドアを開けておくといった対策を取ることで、店員の感染のみならずお客さん同士の感染にも配慮するよう呼びかけています。
続いて第2段階の実行。最低限勤務開始前と開始後は手を洗う、石鹸を用いて頻繁に手を洗い、使い捨ての紙タオルでしっかりと手を拭く、商品を手で触らない、清掃・消毒計画に則って定期的に清掃・消毒を行う、各個人の水筒を用意する、手を洗う時間を確保できる十分な休憩を取る、休憩室も定期的に清掃するといったことが明記されています。
最後の確認の段階ではアルコール消毒液や石鹸などの消耗品を定期的に補給する、ゴミは定期的に捨てる、清掃・消毒計画を準備するといったことが記載されています。
よく読んでみると…
以上、パン屋向けのコロナ対策マニュアルをご紹介しました。よく読んでみると、基本的な事柄が多く、コロナウイルスの流行があろうがなかろうがしなければいけないような対策がほとんどとなっています。今までがどうだったのかは憶測の域を出ませんが、これらの基本的な衛生上の対策がなされていなかった、という可能性もあります。仕事前後に石鹸で手を洗うといった習慣がフランス人になかったのであれば、3月から4月にかけて流行が爆発的に広がったのも仕方なかったことなのかもしれませんし、日本の衛生基準の高さが際立つマニュアルとなっているのではないでしょうか。