【フランス】ロックダウンの解除について【COVID-19】
今回は、4月28日に行われた国民議会での首相演説、並びに在仏日本大使館によるその内容の日本語での要約を参考に、今後のフランスの外出制限がどのように解除されていく予定なのかをご紹介します!なお、4月13日の大統領演説についての記事も参考にしていただければと思います。
現在の状況と今後の基本方針
始めに現在の状況ですが、4月14日以降は入院者数が減少に転じ、4月8日以降重体の患者数も減ってきています。今回の外出制限の実施とその遵守はかなり効果をもたらしたようで、ぎりぎりのところで医療体制が維持されているようです。このため、5月11日以降徐々に制限を解除していく方針が4月13日の大統領の演説で発表されており、今回の首相演説ではその具体的な方策が発表されたという格好になっています。
とはいえ、ワクチンの開発や集団免疫の形成はまだ先であると言うことに言及し、ウイルスの拡散を抑制する必要があるということは述べられており、今後の状況の変化によっては制限解除が5月11日からさらに延期される可能性があることにも言及されていました。
また、実際の規制の解除も毎週状況を確認しながら対応していくようで、6月2日以降さらなる制限の解除を行う予定のようですが、これが遅れる可能性もありそうです。
全国一斉ではない制限解除
さらに、日本国内と同様、フランス国内でも流行の状況にはかなり差があるため、地方・県ごとに解除の状況も変わるようです。これについては、各県ごとの方針が5月7日までに固められていきます。
なお、5月11日以降は「防御(マスク)、検査、隔離」の3要素に重点が置かれるようで、これらについての説明も行われました。
見直されたマスクの役割、強化される検査体制
従来、フランス(及び多くのヨーロッパ諸国)ではマスクはウイルス予防に効果がないとされていましたが、今回の流行を通じてマスクはあるにこしたことがないと科学委員会も見解を変えており、現在はフランスでもマスクの着用が推奨されています。そのため、マスクの国内生産量も通常の5倍になっており、外出制限が段階的に解除され始める5月11日までには十分な量のマスクが供給されるとのことです。
続いて検査についてですが、100%保険でカバーされる検査が5月11日以降週に70万件行われるようです。科学委員会は一日あたり1000~3000の陽性者を見込んでいるようで、僕の解釈では症状の軽い、あるいは無症状の感染者を特定することを狙っているものと思われます。
最後に隔離についてですが、こちらについては日本のクラスター対策と似ています。陽性者が出た場合、その陽性者の濃厚接触者の特定、感染経路の特定、家族の検査を行うとのことです。
セクターごとの対応
以上、国内での今後の対応の原則についてお話をしてきましたが、ここからはそれぞれのセクターにおける対応・規制を紹介していきます。
外出制限
個人的には一番大切な外出制限ですが、5月11日以降は100km以下の移動が解禁されます。ただし、10km以上の移動や県をまたぐ移動は現状通りの特別な場合に限定され、現在同様証明書の携帯が必要となります。少しだけ個人の話を挟むと、僕の寮からパリ市内までは約20km離れており、県境を2回超えるため、僕は外出制限が解除されてからもパリ市内に出ることはできないようです。
※5月4日注記:参照した情報に誤りがあったようで、証明書の携帯が必要となるのは100km以上の移動となるようです。
運行本数が減少していたメトロなどの市内交通は70%程度の運行本数まで回復しているようで、これから元に戻していくようですが、(社会的距離を確保するため)使用可能な座席数は半分に限定するようです。ただし、これがどのように行われるのかについては言及がありませんでした。また、タクシーも含め公共交通機関を利用する際はマスクの着用が義務付けられるようです。
一方、TGVなどの長距離列車の本数は現状が維持されるようで、平常時に比べると大幅に減便される状況は暫く続くようです。事前のチケット予約が必要です。

学校
先日お話したとおり、大学やグランゼコールなどの高等教育機関は9月からの新学期まで閉鎖となることが発表されているため、個人的には新しいニュースはありませんが、今回はそれ以外の教育機関の対応が発表されました。
まず、5月11日以降保育園や幼稚園、小学校が再開可能となるそうです。ただし、フランスは3歳から義務教育が始まりますが、登校は自由となるそうです。また、マスクや(アルコール)ジェルなども供給されるとのことですが、子どもたちのマスク着用は義務付けられません。中学校は5月18日以降再開可能となります。マスクが市町村から供給されるため、先生・生徒ともにマスク着用が義務付けられます。
保育園は1クラス10人以下、それ以外は1クラス15人以下に制限されるため、医療従事者の子供が優先されます。一方、高校は当分の間閉校となるようで、6月2日からの再開の可否を5月末に判断するようです。

企業への要請
企業に対しては引き続きテレワークを要請します。テレワークが不可能な場合であってもローテーションを組むなどし、できるだけ出勤者の数を減らすよう要請をしています。
また、業種ごとに対応マニュアルを作成しており、現在33のマニュアルがあるようです。段階的に60まで拡大するようで、参照するよう呼びかけています。社会的距離を確保できない場合、マスクの着用を義務付けるよう呼びかけています。
さらに、« chômage partiel » と呼ばれる部分的失業制度(支援制度)は6月1日まで延長していく方針のようです。
商業施設
現在、商業施設はスーパーなどの食料品店、薬局、タバコ屋など生活に必要な最低限の商店しか営業が認められていませんが、5月11日以降はカフェやレストラン、バー、ディスコ、大型ショッピングモール(4000平方メートル以上)以外の施設は再開できるようです。また、マルシェ(市場)も5月11日以降再開できますが、こちらは地方自治体(commune)の判断で閉めることもできます。5月11日以降も再開できないカフェやレストランなどの施設は、6月2日以降の再開が検討されています。
商業施設には社会的距離の確保や人数制限、マスク着用の推奨など、感染拡大防止のための措置を取るよう呼びかけています。
文化施設やスポーツ、イベントなど
公園などについては、安全が確認され次第解放されるようですが、10人以上の集団利用は引き続きできないようです。また、コンタクトスポーツ(人と人の接触のある競技)や集団スポーツも引き続き認められません。ビーチは6月1日まで引き続き閉鎖されます。
図書館や小規模な美術館は5月11日以降再開することができますが、大型美術館や博物館、映画館、コンサートホール、パーティールームは引き続き閉鎖されます。
大型フェスティバルやスポーツイベントなどは9月まで開催できません。中断されていた2019-2020シーズンもシーズンの中止が宣告されました。
教会などの宗教施設は5月11日以降再開されるようですが、宗教行事は6月2日まで引き続き禁止されます。お墓参りは5月11日以降可能となるようです。
今回の発表を受けての感想
フランスで外出制限が施行されたのが3月17日の火曜日なので、ちょうど6週間が経過しました。ウイルスの急激な拡大を受け、当時は事態が急激に展開しましたが、これ以上の外出制限の継続は経済に与える影響が大きすぎるとの判断の元、対策を講じた上で「ウイルスと共存する」道を歩みはじめようとしています。
今回の演説で向こう1ヶ月の見通しが発表されたことになるわけですが、やっと発表されたという印象を受けました。おそらく、5月11日までにはマスクの供給体制や検査体制が整うという見込みがあるのだと思いますし、今後の状況によっては施設の再開などが延期される可能性もありますが、今後に向けての方針が示されたというのは1つ前向きに捉えられる内容だと思いました。
フランスでは、マクロン大統領が進めており、1ヶ月以上に渡る大規模なストライキを引き起こした年金制度改革が中止されました。ビザの更新窓口も無期限で閉鎖される等、行政手続きも完全にストップしているようで、ウイルス対策に注力して全てのリソースを人命の保護のために使うという覚悟が見受けられます。非常事態ですし、対応に正解などはないと思いますが、今回のフランスの対応では可能なリソースを全て使い果たして最大限の対応をしているように見受けられました。