【2020年9月現在】フランス新型コロナウイルス状況まとめ

2020-10-05

2020年9月25日、パリ11区にあるフランスの風刺週刊紙、シャルリー・エブドの元本社前で刃物による襲撃事件が起こりました。

事件のタイミングは現場から1km圏内にいたのですが、現場付近に向かうパトカーや救急車のサイレンが止まらず、少し怖かったです。被疑者が逮捕されるまでの間、周辺の地下鉄駅は全て封鎖され、近隣の学校の児童・生徒には待機命令が出されていました。こちらの待機命令が出た後、帰宅しましたが、パリ11区役所は警察官によって封鎖されていました。

事件の数時間後にはJean CASTEX首相が現場に急行し、記者会見を行いました。

さて、今日は9月23日の記者会見にて発表された新たな新型コロナウイルス流行警戒態勢についてまとめます。

現在の状況

その前に、まずは現時点での流行状況と検査体制の確認から。

フランスコロナ感染者変動
Santé publique Franceより

このブログではすでにおなじみとなったグラフの登場です。土日にデータが発表されなかったり、検査数が減ったりするケースが有るため、短期での新規の感染者数には増減がありますが、新規感染者は5月から7月にかけて多くても1日2000人程度だったものが増加し、8月から9月にかけては右肩上がりに新規の感染者数が増えているのがわかります。9月24日には1日あたりの新規感染者数が16,096人という数字を記録し、ロックダウン中最悪だった7,578人の倍以上の新規感染者が確認されています。なお、フランスの人口は日本の半分程度なので、割合で考えれば日本で毎日3万人以上の感染者が出ているのと同じということになります。にわかには信じがたい数字ですね。

一方、死者数はこれほどのペースでは増えていません。5~8月に比べると大幅に数は増えていますが、それでもロックダウン中最悪だったときの数字の10分の1程度です。1週間で20万件以上の検査が行われることも多く、それによって多数の軽症者・無症状者が検出されているものと思われます。

フランスPCR検査数
Santé publique Franceより、検査実施状況。現状すでに1000万件以上のPCR検査が行われ、そのうち40万件が陽性となっています。

なお、PCR検査は無症状者でも受けることができ、以下のように地図上で確認することができるようになっています。検査機関にもよりますが、予約はしていったほうが良さそうです。

実際の検査場は屋外にテントを設営しただけの簡易な設備のこともあります。検査が行われている場所の付近では検査を待つ人の列ができているのですぐにわかります

症状があり、医師からの処方箋を持っている場合は24~48時間以内に検査結果が出るようですが、そうでない場合は検査結果が出るまでに10日程度かかる場合もあるようです。

このため、9月24日に感染が確認された16000人あまりの方のうち、大部分の方がそれよりも1週間程度前に感染していた可能性もあり感染が確認されるまでの間に接触者に感染が広がっている可能性も非常に高いと考えられます。現状は完全に感染をコントロールできていない状況と言えるでしょう。6月に行われた勝利宣言は聞かなかったことにしておきましょう。

今後の警戒態勢

さて、ここまで長くなってしまいましたが、いよいよ本題。9月23日の記者会見で、3段階の警戒ゾーンの導入が発表されました。現地での報道と日本大使館からのメールを参考に以下に概要をまとめます。

【警戒ゾーン Zone d‘alerte】

1週間あたりの新規感染者数が人口10万人につき50人以上の場合に指定され、現状では100あまりある県のうち69県が指定されています(なんと過半数)。9月28日以降、祝祭や結婚などの各種イベントによる集会が30名未満に制限されるほか、各県のPréfetと呼ばれる官選知事が適切な措置を決定します。

警戒ゾーン一覧
フランス政府公式Twitterより。指定されていない県のほうが少ないのがわかりますね。

【警戒強化ゾーン Zone d‘alerte renforcee】

1週間あたりの新規感染者数が人口10万人につき150人以上、あるいは高齢者の新規感染者数が10万人につき50人以上の場合に指定され、現状では11のメトロポール(周辺の自治体を含む大都市圏。ボルドー、リヨン、ニース、リール、トゥールーズ、サン・テティエンヌ、レンヌ,ルーアン,グルノーブル、モンペリエ、パリ)と、パリ近郊3県(セーヌ・サン・ドニ、オー・ド・セーヌ、ヴァル・ド・マルヌ)が指定されています。

警戒ゾーンよりも各種制限措置は厳しくなっており、以下のような措置が適用されます。

  • 9月26日以降大規模な集会は1000人までに制限
    • これを受け、ローラン・ギャロス(テニスの全仏オープン)も観客数を1日あたり1000人に制限
  • 大規模な地域的イベント、フェスティバル、学生のパーティー等の開催は禁止
  • 公共の場所(ビーチ、公園等)において10人以上の集会禁止
  • 9月28日以降バーはPréfet(官選知事)が定める時刻(遅くとも22時に閉店
  • 9月28日以降ジム等のスポーツ施設と体育館を閉鎖
  • 9月28日以降全ての祝祭場や多目的ホールを閉鎖
  • 可能な限りテレワークの実施を推奨

ロックダウン後のPhase2の状態(6月)に戻ってしまったような感じです。

【警戒最大化ゾーン Zone d‘alerte maximale】

1週間あたりの新規感染者数が人口10万人につき250人以上高齢者で10万につき100人以上重篤者用病床の占有率が30%以上のいずれかの場合に指定され、現状はエクス・アン・プロヴァンス=マルセイユのメトロポール海外県のグアドループのみが指定されています。警戒強化ゾーンで導入されている制限措置に加え、9月26日以降全てのバーとレストランの営業停止という非常に厳しい措置が取られています。また、厳格な衛生対策を整えていない施設も閉鎖となるようです(一方で劇場、美術館、映画館は規制対象外)。

マルセイユがあるBouches-du-Rhône(ブーシュ=デュ=ローヌ)県では、このままなんの措置も取られなかった場合に10月13日に集中治療室の使用率が100%となり、11月3日には医療崩壊が起こるという予測がなされており、再度のロックダウンを避けるための厳しい措置となったようです。

これらの制限措置は地方政府への相談なく中央政府のトップダウンの命令として決められたようで、警戒最大化ゾーンに指定されたマルセイユをはじめとした各地で政府の決定に反対する声が上がっているようです。

一方、バーやレストランの閉鎖や営業時間の短縮を命令するのみならず、複数の経済的支援策も導入されています。一例として、影響を受けている間の家賃などの固定費の支援のために2,000ユーロから10,000ユーロの支援が出されることとなっている他、一部の税金の支払いが免除されるようです。

また、首相がテレビ番組に出演し、番組内で規制の内容や規制に至った理由を説明し、反対者からの質問に応える対談なども行われました。

おわりに

これらの措置はこの週末から随時取られていくこととなっており、パリでは歩いている限りは大きな変化は見受けられませんでしたが、今後の動向に注目していきたいと思います。