9月からの新年度の授業もオンライン?ヨーロッパの学校の授業予定を紹介~ENPCの場合~【COVID-19】
7月20日から屋外を除くほぼ全ての場所でマスクの着用が義務化されました。スーパーに立ち寄ったところ、入口に立っている警備員がマスクをしていない人に声掛けをしており、持っていない場合は店内に入れないようにしていました。
マスクを着用していない乗客の利用を拒否したバスの運転者が暴行を受け、その後死亡するという痛々しい事件もありましたが、今回の義務化でそのような痛々しい事件が起きないことを強く祈っています。
新学期の授業の実施について
さて、今日は僕が留学しているENPC(École nationale des ponts et chaussées、フランス国立土木学校)からのメールを参考に、9月からの新年度の授業がどうなるのかについて解説します。
そもそも2019-2020年度後期の授業はどんな感じだったのか
COVID-19のフランス国内での感染者が急増していたため、3月12日(木曜日)にマクロン大統領が演説の中で翌週(16日からの週)以降の教育機関の閉鎖を宣言して以来、6月頭に(2月頭に始まった)後期が終わるまでENPCでは全ての授業が遠隔(オンライン)で実施されました。スポーツの授業は途中で打ち切り、その他一部の実習系の授業も大幅にカリキュラムが変更となりましたし、通常の講義やパソコンなどを用いた演習系の授業もトラブル続きでなかなか難しい学期でした。5月以降、小学校などが徐々に再開した後も高等教育機関は再開しないこととされ、図書館へのアクセスなどもできない状態が続いたまま夏休みに入ってしまいました。
ENPCでも独自にオンライン授業の導入を検討していたようですが、その決定が下される前に政府の決定があったということで、非常に慌ただしい対応になってしまったことに変わりはなかったように感じられました。
なお、このような対応は、話を聞く限りENPC特有のものではなかったように思えます。Ministère de l'Enseignement supérieur, de la Recherche et de l'Innovation(高等教育・研究・イノベーション省)の監督下にある通常の大学等と違い、ENPCはMinistère de la Transition écologique et solidaire(環境連帯移行省)の傘下にありますが、ENPCの対応が特別だったという印象は受けませんでした。
「教室」か「オンライン」か、完全な二者択一ではなく…
さて、7月6日のこれら関係省庁からの通達によれば、「ハイブリッド」が新学期の授業実施における基本方針となるようです。各担当教員がそれぞれの講義の特性に合わせキャンパスで授業を行うかオンラインで行うかを選択する模様で、場合によっては午前はオンライン、午後は教室でといった可能性もあるようです。

一方で、教室で授業を行う場合は2席に1席の割合でしか学生を受け入れられないため、どちらでも授業が実施できる場合はオンラインでの授業実施を推奨するようです。(履修人数が多く、)完全オンラインでの実施が難しい授業(必修の学生実験などのことだと思います)では、履修者の半分は教室で授業を受け、残りの半分はオンラインで授業に参加するという形式もあり得るようです。この場合は、オンラインで授業を受けている人も教室でどのようなことが行われているかをわかるようにするため、映像を配信するようです。学校側は使用する教室に必要な設備を導入している最中ということで、ウェブカメラやタブレットなどを新しく導入しているものと考えられます。
また、フランス国内では現状移動制限は実施されていませんが、(特にシェンゲン協定加盟国外からの)留学生など、国境閉鎖によってキャンパスに来られない学生は、国境が開放され、キャンパスに来られるようになるまでの間はそれぞれのタイムゾーンに従って授業を受けられるようにするとのことで、おそらく録画された授業が配信されるものと思います。
どのような授業がキャンパスで行われるのか
ENPCから送られてきたメールには、教室で行われる授業やオンラインで行われる授業の例が記されていました。教室で実施されるのは
- (対面ではなく)横向きに1mの距離を確保できる程度の少人数でおこなわれる授業
- パソコン室など、受講人数に対する教室の大きさを考慮し、マスクの着用が義務付けられる場合がある。
- 講堂では2席につき1席のみを用いる。扉は入口専用、出口専用と完全に分離され、講堂内の移動は一方通行で行われる
- 演習や実験など、学校の設備を用いる必要のある一部の少人数講義
- スポーツの授業
- 9月28日の週から全ての種目において再開される
などがあげられます。一方、全てがオンラインで行われる授業は
- 大半の講義形式の授業
- 演習形式の授業のうち、担当者がオンラインで実施可能と判断したもの
- 大半の語学の授業
が挙げられます。語学の授業については少人数で行われることが多いですが、オンラインでの実施が比較的用意であることからこのような対応を取っているものと思われます。

オンライン授業で用いるツールは変更
3月以降、ENPCではすでにライセンス契約を行っていたAdobe connectをオンライン授業のメインツールとして用いていましたが、接続が集中した場合に著しく通信のクオリティが落ちたり、UIが使いにくかったりと満足度の高いツールではありませんでした。そのため、来学期以降はよりよいツールと考えられるマイクロソフト社のTeamsを利用するようです。授業開始に先立ち、近日中にチュートリアルが学校側から送られてくるようです。また、非常勤の講師の方を中心にZoomを用いる場合も多々ありましたが、それらの授業では引き続きZoomを用いて授業が行われるようです。
また、オンライン授業を円滑に行うため、通信環境を整備するよう学生寮の運営会社に要請したとのことでした。
各種感染症対策の徹底のため…
その他に学校側からは
- 2・3年生向けの9月の学科研修旅行は延期
- 新入生歓迎会やグラン・ゼコール対抗スポーツ大会など、多くの学生が集まるイベントも延期
- これらについては事態が改善し次第代替日程を検討するとのことです。
- アルコール消毒液やアルコールペーパーを各教室に設置
- マスクの着用が義務となる場合でも支給はない
- 食堂の営業についてはサービス提供者と調整中
- 特別な許可がある場合を除き、8月末までは構内立入禁止
といった旨の連絡がありました。

ENPCの留学生は原則全員2年生に編入という形になるので、コミュニティに溶け込むのにやや苦労します。学科研修旅行がある場合、ホテルの同じ部屋の人などから徐々に友達を作っていくことができるのですが、それが延期されてしまうとなかなか友達を作るのが難しくなります。フランス語での講義についていくのは正直かなり難しく、特に最初はフランス人の友人にノートを見せてもらわないと授業の内容も理解できなかったので、そういった友達づくりの機会が無いというのはかなりしんどそうです。
今年からの新留学生向けに新たなサポート体制なども構築中のようですが、うまくいくのでしょうか…