【コルビュジェ】世界遺産のロンシャンの礼拝堂行ってきた【訪問記】
この夏は情勢の急変が怖く、国外に行くのをためらっていた僕は原則フランスの中にとどまることにしました。そこで、フランスの観光地で行ったことのないところを考えているうちに、ル・コルビュジェの作ったロンシャンの礼拝堂に行ってみたいと思っていたことを思い出しました。この機会に行かなければ次に行くのはいつになるかわからないと思ったので、思い切って弾丸で行ってみた、そんな訪問記になります。

ロンシャンの礼拝堂の歴史
そもそもロンシャンの礼拝堂(Colline Notre-Dame du Haut)とはどういう場所なのか、見学の際の資料から軽くまとめます。Ronchampは「ローマ人の丘」を意味する”Romanorum Campus”から変形したものと考えられており、ローマ時代から軍事基地も置かれる見張り台として使われていたようです。

そんな丘の上にあるこちらの礼拝堂ですが、元々は丘の下にあるロンシャンの村民が使用した礼拝堂。ここへの聖地巡礼は9世紀からすでに行われていたそうで、現在も8月15日と9月8日に巡礼の式典が行われます。
フランス革命の間に礼拝堂は国有財産となりましたが、その後1799年に168人の村民が礼拝堂を買い戻し私有地となりました。荒れ果てた礼拝堂は再建が行われたようですが、その甲斐も虚しく第二次世界大戦中に爆撃を受けて破壊されました。
大戦後、村民たちによる所有者教会は、モダンな礼拝堂としての再建することになりました。ル・コルビュジェは1950年にこのプロジェクトを依頼されましたが、当時はマルセイユの「輝く都市」やインドのチャンディーガルの大規模プロジェクトに全霊を傾けていたため、こちらのプロジェクトは断るつもりでした。
しかし、5月にこの地を訪問したコルビュジェはこの丘の展望に魅了され、創作の自由が保証されていたこともあり制作に取り掛かることを決意。1953年に工事が始められ1955年に新しい礼拝堂が竣工しました。以来65年にわたってロンシャンの丘の上に佇んでいる礼拝堂となります。
ロンシャンの礼拝堂のアクセス
コルビュジェの代表的な作品の1つとしても知られ、東京の国立西洋美術館などと共に世界遺産にも登録されているロンシャンの礼拝堂。コルビュジェの他の作品(見に行ったことがあるのはサヴォア邸とフィルミニーの建築群のみですが)とかなり趣が異なっており、建築に興味がある人には非常におすすめしたい場所なのですが、アクセスは非常に悪いです。スイスとフランスの国境近くにあり、パリから400kmくらい離れてます。

電車で行く場合、Gare de Lyon(パリ・リヨン駅)からスイスのチューリッヒ行きのTGV Lyriaに乗って最初の停車駅、Belfort-Montbéliard TGV(ベルフォート・モンベリヤーTGV駅)まで約2時間20分。そこから中心部にあるBelfortの駅まで10分ほどローカル線に乗り、そこでさらに別のローカル線に乗り換えて4駅20分(この区間は時間帯によってバスでの移動となることもあり、その場合は50分ほどかかります)。リヨン駅を出発してから3時間半~4時間経ったあたりでやっとRonchamp(ロンシャン)の駅に到着します。
BelfortまではFlixbusでも行けるようですが、TGVとほとんど値段が変わらなさそうだったので、おとなしくTGVで行きました。




駅からは山道を登って30分ほど。気温が30度を超える晴れた暑い日だったのでかなりしんどかったです。パリからだと車でも4時間程度なので所要時間はそこまで変わらないですが、列車の本数が非常に少ない上に山道がかなり厳しいので、車で行ける場合はそうすることをおすすめします。
駅から徒歩で行く場合、車道を登っていくこともできますし、あまり知られていない昔ながらの登山道を登っていくこともできます。車道の場合、観光案内所やふもとの教会のすぐ向かい側から登っていく形になるので、そちらにも寄り道するといいでしょう。



地図を見ていただければわかると思いますが、バーゼルやベルンなどのスイスの都市からのほうがパリから行くよりも行きやすいです。日本から来られる場合はそっちのルートも検討してみてもいいかもしれません。フランス国内だと、ミュルーズやブザンソンなどの都市が比較的近いでしょうか。
僕は朝の7時20分頃にリヨン駅を出発し、11時50分頃に無事に礼拝堂に着くことができました。Belfortの駅で50分くらい乗り換えに時間があったので、そこが非常にネックでした。スケジュールの都合上、弾丸日帰り旅になってしまいました。
礼拝堂の特徴
多くの人が評価をするこの礼拝堂は、これでもかというばかりの特徴があります。僕がいくら語ってもそれらの特徴を伝えきることはできないことがしたので、箇条書きにした上でたくさんの写真でごまかしてしまおうと思います。ぜひ現地に行かれて体感してみてください。
- 自然光を最大限活かす窓の配置
- 礼拝堂の内部からも外廊からも見られるよう回転機構を組み込んだ18世紀の聖母マリア像
- 巡礼のときにのみ開放される大扉
- シェル構造を用いたアーチ型の天井
- 壁に使われている旧礼拝堂の石
- 自身の発明した基準寸法のシステム、モデュロールによってデザインされた家具
- 2000人の人に話しかけられるよう音響を工夫した外廊
- …などなど。








コルビュジェの提唱した近代建築の五原則(ピロティ (les pilotis)、屋上庭園 (le toit-terrasse)、自由な設計図 (le plan libre)、水平連続窓 (la fenêtre en bandeau)、自由なファサード (la façade libre)、和訳はWikipediaを参照)は使われていませんが、だからこそコルビュジェの作品はあまり好みでなくてもこの礼拝堂だけは素晴らしいという建築家もいます。
また、この礼拝堂がコルビュジェによって作られた後、1975年にはジャン・ブルーヴェによって鐘楼が、2011年にはレンゾ・ピアノによって修道院や案内所の建物が作られました。特にレンゾ・ピアノの設計した建物は地形をうまく利用し、コルビュジェの礼拝堂からその姿が見えないよう丘に埋まる形で立てられています。これらの建物も一部見学することができます。




さらに、庭はフランスのランドスケープデザイナー、ミシェル・コラジュによってデザインされています。建設のために一部が切り開かれた丘は工事後に植樹が行われ、長い年月をかけて周囲の森により溶け込んだ形になると期待されています。
実際に訪問をしてみて
建築は専門外の分野ですが、そんな僕が見ても他の礼拝堂とは一味違うな、というのが簡単にわかる作品です。なぜここはこのようになっているんだろう、という疑問がないわけではないですが、日本語でも用意されている解説資料を読みながら、コルビュジェが村民の期待に応えるために工夫を凝らした設計の特徴が少しだけ分かったような気がします。
アクセスは非常に悪いですが訪れる価値のある場所だと思うので、丘のふもとにあるノートルダム・デュ・バ教会(Notre-dame du Bas)とセットで訪れてみてはいかがでしょうか。日程に余裕があれば天気のいい日を選んで行くことをおすすめします。
基本情報
変更の可能性があるので、公式サイトで確認するようにしてください。
見学時間
10時から18時(最終入場17時半)
見学料金
ハイシーズン(2020年4月1日から10月31日まで)
大人9ユーロ
割引6.5ユーロ(障害者、30歳までの学生)
子供5ユーロ(8歳から17歳)
オフシーズン(2020年11月1日から2021年3月31日)
大人8ユーロ
割引6ユーロ(障害者、30歳までの学生)
子供4ユーロ(8歳から17歳)
日本語サイトもありますが情報更新頻度は低そうなので、基本情報の確認はフランス語・英語版サイトが無難です。9月6日時点では日本語サイトでは閉鎖中となっていますが、マスク着用のもと問題なく見学可能になっています。