【留学】【奨学金】魅力はお金だけじゃない?フランス政府奨学金について徹底解説!

2020-10-05

2020年春頃から猛威をふるいはじめ、世界中を混乱に陥れてきた新型コロナウイルス。そんな状況でもパリに残り続けている僕ですが、今回のENPCへの留学をする上で様々な方にお世話になっています

その中で絶対に忘れてはいけないのが奨学金。今いただいている奨学金がなければ、今回のフランス留学は金銭的に非常に厳しかったと言えます。そこで、この記事ではフランス留学を考える上で申し込むべき奨学金ナンバーワンをご紹介します。

フランス政府奨学金って何?

今回ご紹介するのはフランス政府奨学金理系向け文系向けの2種類が用意されており、ありがたいことに私も理系の奨学生として支援を頂いております。

どんな支援が受けられるのかどのようなプロセスで選考されるのかについて解説していきます。理系向けと文系向けで微妙に内容が違うので、今回は理系向けに特化し記事です。文系向けについては後日ということで。

誰が応募できる?

こちらの奨学金、正直言って最強の奨学金です。フランス政府からいただくことができるので、ステータス的な意味合いでも非常に強力です。そんな中、唯一の弱点がここ。対象者がかなり限られています。

高校生以下での留学は対象外ですし、学部生・修士生の場合はフランスの学校に進学する場合に限られます。ダブルディグリーの場合は応募ができます(学部生の場合はダブルディグリーの場合のみが対象です)が、大学生の留学で最も一般的と言える交換留学の場合は日本の大学に進学するという形になるので(おそらく)対象外となってしまいます。このため、応募できる方はやや限られてしまうかもしれませんが、その分応募ができれば採択してもらえる可能性は高いとも考えられます。もし自分の留学計画が見事に応募資格とマッチする場合は申し込まない手は無いと言えるでしょう。

博士課程の場合はもう少し対象が広がります。フランスの大学の博士課程に進学し、フランスの先生を唯一の指導教官とする場合のほか、日仏両方の先生を指導教官とする場合(交互滞在型)や日本の大学を拠点とし、研究実習のみフランスで行う場合(研究実習給費)も用意されており、何らかの形でフランスで研究を行う場合はかなりの確率で応募資格があると言えるでしょう。

理系が対象の奨学金となっていますが、理系に含まれるのは以下の領域に関連する分野です。いわゆる理系分野は全てカバーされていると言えるでしょう。

  • 数学とその関連領域・物理・化学
  • 工学・情報通信技術
  • 地球科学・宇宙科学・環境学
  • 生命科学・医学・農学

また、年齢制限も設けられており、30歳未満が応募年齢の目安です(2021-2022年度の場合、1991年1月1日以降出生)。日本国籍保持者・ないし日本永住権保持者でない場合は応募できないことになっていますが、この奨学金は日本のみでないと思いますので、各国で情報を収集されることをおすすめします。

語学力について、フランス語ができることは求められますが、留学先での活動が全て英語で行われる場合はフランス力不問となっています。ただし、この場合は英語力が問われます(詳しくは選考手順のところで)。いずれにせよ、語学力の証明書は準備しておいたほうがよさそうです。フランス語の場合はDELF・DALF、英語の場合はTOEFLやIELTS、ケンブリッジ英検がいいでしょう。TOEICは海外では通用しないと考えられがちですが、フランスではTOEICもそれなりに通用します(卒業要件にTOEICの点数が含まれている学校もあります)。TOEICしか持ってないという場合は無理に追加で試験を受ける必要はないと思います(受け直すのであればTOEIC以外を受けたほうがアピールになるとは思います)。

また、収入面での制限はありません。自身や家族の収入を申告する必要はありませんでした。

どんな支援が受けられる?

学士・修士博士(通常)博士(交互滞在)博士(研究実習)の4パターンがあり、それぞれのパターンに応じて微妙に奨学金の内容が異なります。僕は修士で留学をしているので、学士・修士の場合をベースに解説していこうと思います。

学士・修士の留学の場合、フランスの学事歴に合わせて9月から6月までの10ヶ月間(夏休みの7・8月を除く)、滞在費として月額700ユーロが支援していただけます。現状、フランスで学生ビザを更新する場合は毎月の生活費として615ユーロ以上の収入(仕送り・奨学金など)があることを証明する必要があるので、月615ユーロというのが学生が1ヶ月暮らすのに最低限必要なお金とみなされていることがわかります。それと比べると15%ほど多くもらえるので、大学の寮などに入居し、料理も自炊や学校の食堂などを基本とすれば十分に暮らしていくことができる額がいただけると言えるでしょう。

この他、

  • フランスの社会保険料免除
  • 日本とフランスの往復の航空券(エコノミークラス、航空会社などは指定できない)
  • 大学などの学費・入学金が免除(上限5000ユーロ/年・要問合せ)
  • 700ユーロの学習・研究手当(書籍代などとして、3ヶ月以上滞在の場合)
  • CROUSの運営している学生寮への優先入寮権
  • ビザ申請費の免除
  • ビザ申請時の面接の免除
  • CVEC負担金の免除

が奨学金の支援内容に含まれます。留学でかかるお金といえば学費・滞在費(生活費)・保険・往復の航空券代・ビザ関連がメインの出費となりますが、その殆どがカバーされると考えて問題ありません。一部のグランゼコールなどでは年間の学費・入学金などの合計が5000ユーロを超すところもありますので、その場合は超過分については自己負担となりますが、それでもほとんどが支援していただけるということになります。なお、CVECとはフランスの教育機関に所属する場合に必要な負担金で、年額約90ユーロです。

注意が必要な点として、この社会保険には賠償責任保険や住宅保険などは含まれていないので、自身で加入する必要があります。

フランスでの家探し、特にパリでの家探しは非常に難しい(家賃が高いことが多く、人気の物件はすぐに埋まってしまう上、外国人の場合は保証人を見つけるのが難しいことから一部の大家には断られる場合もある)ことから、学生寮に優先的に入ることができるというのも非常に魅力的です。ただし、空室状況によっては希望の寮に入ることができない場合もあるようなので、そこは事前に承知しておく必要があります。

博士留学の場合も大まかな支援内容は同じですが、部分的に異なります。博士(通常)及び博士(交互滞在)の場合は、毎月の滞在費が700ユーロから1060ユーロに増額され、支給期間も最大18ヶ月となります。その他の支援内容は学士・修士と同様です(ただし、交互滞在の場合は航空券の支給は初回のみです)。

博士(研究実習)の場合は滞在費が1704ユーロとなりますが、フランスの機関に登録することが必須ではないため、学費の支援と700ユーロの学習・研究手当の支給はなくなります。

なお、応募要項は重複受給について以下のように記載されています。可能な場合もありますが、不安な際は事前に問い合わせたほうが良いでしょう。

フランス政府奨学金留学生制度はフランスのヨーロッパ・外務省以外の省庁(博士契約)、エラスムス・プ
ラス(Erasmus +)、フランコフォニー大学機構(Agence universitaire de francophonie)の奨学金との重複受給を認めていません。これらの機関から奨学金を受給する場合、フランス政府奨学金は取り消しとなります。
日本の奨学金との重複受給は部分的に可能です。合格者がフランス政府奨学金以外の奨学金(日本学術振興会、トビタテ、JASSO など)の受給する場合は、社会保険と往復航空券のみの支給となります(給費内容および給費の可否は、重複受給される奨学金の規定や内容により異なります)。

応募の仕方は?どうやって選考されるの?

僕が応募したときは応募書類は全て郵送する必要がありましたが、現在は全てインターネットでの申請となっているようです。必要な書類は以下の通り。

  • 略歴(フランス語or英語 + 日本語)
    • 学校名、研究経歴、職歴、発表論文、学位と証明写真
  • 現在(あるいは直近)の指導教員からの推薦状(フランス語or英語)
  • フランスの受入期間からの受け入れ承諾書(フランス語or英語)
  • 研究計画書(フランス語or英語)
  • 成績証明書(フランス語or英語)
    • 大学入学以降

その他、オンラインフォームに基本事項を入力する必要があります。2021-2022年度の場合はこれらオンラインの申請は11月20日が締め切りとなっており、これらの書類をもとに書類審査が行われます(選考基準は留学・研究計画の質、及び語学力)

書類審査に通過した場合、フランス語あるいは英語の面接試験が行われます。僕が面接試験を受験した際は日本人2人とフランス人2人、合計4人の面接官の方がいらっしゃいました。募集要項によれば研究分野の専門家とフランス大使館の代表者によって構成されているようです。

面接試験は原則東京のフランス大使館で行われますが、遠距離に在住の場合はオンラインで受験することも可能なようです。詳細は問い合わせるのが無難でしょう。

面接試験の際は、事前に用意したプレゼンテーション(5枚程度)をもとに最初の10分程度で自身の研究計画を説明し、その後20分程度の質疑応答があるという極めてオーソドックスな形式です。この面接試験では以下の5つの評価軸に沿って選考が行われているようです。

  • 研究計画の適切さ
  • 研究テーマの理解度
  • キャリア計画
  • 研究計画書および口頭発表能力
  • フランス語力ならびに(または)英語力

4名の面接官全員から質問をいただいた記憶がありますが、面接自体は終始和やかな空気で進んだので、緊張こそしたものの自分の喋りたい内容をしっかりと話すことができました。僕はその時点ではほとんどフランス語の勉強をしていなかったので英語で面接を行いましたが、面接の最後にフランス語力について確認されました。これから勉強しますと答えた記憶があります。

形式はオーソドックスですし、聞かれる内容もすごいシンプルなので、変に準備をしすぎる必要はないでしょう。自分がどんな目的を持って留学するのか、どのような研究をしたいのか、それを将来どのように活かしたいのかなどをしっかりと話せるように準備しておけば十分だと思います。奨学金に応募する時点で受入機関からの内定が出ていると思うので、そちらに応募した際の書類の内容をうまく使うようにするといいでしょう。

面接の1ヶ月後くらいに結果が発表された記憶があります。採択していただけていたので非常に安心しました。

滞在期間が1年を超える場合

日本で最初に申請できる学生ビザは1年間しか有効でないので、滞在期間が1年を超える場合は現地でビザを更新する必要があります。本来であれば十分な資金力があることを証明する必要がありますが、フランス政府奨学生の場合はその旨を証明すれば資金力証明を満たすことができます(その他の場合だと口座残高が十分なことなどを証明しないといけない)。

まとめ:非常に内容の充実している奨学金

というわけで、今回はフランス政府奨学金(理系)について解説していきました。対象者がやや限られているのがネックですが、博士の方を中心に応募対象となる方はいらっしゃると思うので、自身が応募対象となっている場合は積極的に応募するといいでしょう。

フランス政府奨学生であるというだけで現地の手続きが早く進むこともあるので、奨学生として採択していただけて本当に感謝しております。