【フランス大統領】5月7日の記者会見の内容【COVID-19】
本日5月8日はフランスの祝日(1945年5月8日の戦勝記念日)なので、5月7日が外出制限令の部分的実施日(5月11日)前の最後の平日でした。フィリップ首相、及び複数の大臣が参加した記者会見で様々なことが発表されたため、本日はフランスの大手新聞社、Le Mondeの情報などを元にその内容についてお話したいと思います。
2つに分断されるフランス
以前からお話している通り、フランスではウイルスの新規感染者数(新型コロナウイルスの疑いで救急にかかった患者率)と現時点での病床数を指標とし、ウイルスによる影響が比較的少ない緑のゾーンと未だにウイルスによる影響が大きい赤のゾーンに分類されています。
5月11日からの段階的な制限解除に向けて、最新版のゾーン分けが発表されました。
赤のゾーンに分類されたのは、l’Île-de-France(イル・ド・フランス地方、パリ周辺)、les Hauts-de-France(オー・ド・フランス地方、リール周辺)、la Bourgogne-Franche-Comté(ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方、パリの南東部,ディジョンなど)、le Grand-Est(グラン・エスト、フランス東部、ストラスブールなど)、Mayotte(マヨット島、インド洋上の海外領土)の5つの地方で、合計するとフランスの人口の40%にあたる2720万人が住んでいる地域にあたります。
マヨット島では現在も患者が増えていることから、外出制限の解除は延期されるようです。また、イル・ド・フランス地方では当初の予測よりも患者数の減少が鈍くなっており、外出制限の解除はより慎重に行われる方針となっています。
なお、これらのゾーンの更新は今後も毎日行われる模様ですが、その変更が意味を持つのは6月2日以降となります。それまでの期間にゾーンが変更となっても認められる行動に変化はありません。
赤ゾーンと緑ゾーンの違いは…?
本日の発表によれば、5月11日時点では赤ゾーンと緑ゾーンの大きな違いはありません。あるとすれば、緑ゾーンでは5月18日から認められる中学校の再開が赤ゾーンでは当面認められないこと、緑ゾーンでは開放される公園や庭園が赤ゾーンでは開放されないことのみのようです。
一方、より踏み込んだ制限解除の目安日となっている6月2日以降は大きな差が出てきそうです。緑ゾーンではレストランやカフェなど、多くの人が集まる施設の営業再開も視野に入っているようですが赤ゾーンではそれらの再開は6月2日にできる見込みはなく、5月11日時点と大きく状況が変化しないと考えられます。
認められる移動
5月11日以降、100km以下の移動、及び100kmを越える移動のうち県をまたがない移動については特別な証明書なしに自由にできるようになります。しかし、100kmを超え、県をまたぐ移動の場合は新しい移動理由宣誓書(Attestation)が必要となるようで、これらは5月11日からフランス内務省のホームページで入手可能となるそうです。県をまたがない移動である場合、居住地を証明できる書類(住居契約や住所付きの請求書など)を携帯する必要があるようです。
公共交通機関の運行本数についてですが、TGVやIntercitéは通常比20~30%程度に抑えられます(参考:5月7日は7%)。加えて、使用可能な座席は物理的な距離を考えて半分に限定されています。このため、実質的な供給座席数は10~15%に限定されており、移動手段としてはあまり機能しないと考えて良いでしょう。
地下鉄やバス、トラムなどの都市交通の運行本数は50~100%となるようです。パリの場合、5月7日時点で30%程度の運行本数だったのものが月曜日には70%となるようです。
公共交通機関を利用する場合、11歳以上の全員がマスクを着用する必要があります。マスクを着用しなかった場合、135€(16000円前後)の罰金が課されます。


また、イル・ド・フランス地方の場合、朝夕のラッシュ時(朝5時半から10時半、15時半から19時半)の間は特別な事情がある場合のみしか公共交通機関を利用することはできません。公共交通機関を利用する場合、企業による通勤事由証明(テレワークができないことを証明)を提示するか、緊急で移動が必要なこと(健康上の理由、司法・行政からの呼び出し、子供の同伴など)を証明する必要があります。
テレワークができない場合でも時差通勤を行い、混雑を集中させないよう要請されています。
閉じられたままの国境
ヨーロッパの国々(EU圏、シェンゲン圏、イギリス)との国境閉鎖は最低6月15日まで続くようです(越境労働者を除く)。また、それ以外の国々(日本を含む)との国境は新しい通知まで閉鎖されたままとなります。
長期ビザなどを所持している場合は入国できる場合もあるようですが、その場合は検疫のため14日間の隔離が要求されます(シェンゲン圏からの入国を除く)。
強化された検査体制
以前にも予告されていたとおりウイルス検査体制の強化が行われ、毎週70万件の検査を行う体制が整ったようです。このため、疑いのある症状を持った全ての人が検査を受けることができ、検査にかかった料金は100%保険で返金されるとのことです。
検査結果を待っている間は自己隔離することが要請されます。また、検査結果が陽性だった場合、濃厚接触者を洗い出すための調査が行われることとなるようです。陽性の場合は症状が収まってから2日間は自己隔離することが要請されており、自己隔離の期間は平均して8日から10日になるとのことでした。
再開するもの、再開しないもの
5月11日からどのような施設が再開可能なのか、逆にどのような施設は再開不可能なのかについては以前こちらの記事でも紹介しました。

また、屋外のマルシェや美容院、エステサロンなども営業を再開できるようです。
今回はより具体的な情報を20minutesのライブ配信で見つけたのでご紹介します。
世界的にも有名なシャンゼリゼ通りのお店は8週間に渡って営業を停止していましたが、その半数以上が月曜日から営業を再開するようです。営業時間は平日と土曜日が11時から19時、日曜日は11時から18時とやや短めですが、それでも営業が再開されるとあって多くの人が集まるのではないかと踏んでいます。
一方、モン・サン・ミッシェルでは修道院は閉鎖されたままのようです。島内部の一部の商店は営業を再開するようですが、島にアクセスするための電気バスの乗車人数も厳しく制限されるようで、観光に行くのはやめるべき状況です。
平時の生活とは程遠い、外出制限解除の第一歩
ご覧のように、外出制限が解除されるとはいえ閉鎖が続く場所や制限されることは多く、まだまだ平時の生活とは程遠いです。外出制限は実施よりも解除が難しいといったところでしょうか。これが失敗し、流行の第2波が来るようなことがあれば再び外出制限に逆戻りとなる可能性も大いにあるように思えます。
流行を抑えるため、引き続きルールを守り他者との接触を控える必要があります。フランスの人々がきちんとルールを守り、外出制限解除を一歩先の段階へとすすめることができるのか、大きな挑戦が始まりそうです。