革命記念日のパリと止まらない新型コロナウイルスの流行
7月14日はフランスにとって特別な日。1789年にフランス革命の発端となるバスティーユ監獄の襲撃事件が起きた日で、フランス共和国の成立を祝う祝日です。2020年は新型コロナウイルスの流行のため、様々なイベントがキャンセルされましたが、それでも一部のイベントは執り行われました。
軍隊によるパレードは規模を縮小
パリでは例年、軍によるパレードが行われます。有名なシャンゼリゼ通りを完全封鎖し、近隣のメトロの駅も複数閉鎖する非常に大掛かりなもので、例年は制限こそあれど、見学自体は可能だったようです。しかし、今年はCOVID-19の流行の影響を受け、行進を行う人数は半分程度と大幅に縮小されたほか、人々の密集を防ぐため周辺一帯が閉鎖され、テレビ中継を除き一切の見学が不可とされました。
買い物で近くまで行ったため、セレモニーなどが終わった13時頃にコンコルド広場のほうに向かってみましたが、事前の情報通り完全に封鎖されており、歩行者もコンコルド広場までたどりつけないようになっていました。

セレモニー自体は終わっていたため、この写真を撮った1時間後には封鎖は解除されたと思われる。
昼過ぎに外に出た段階ではすでに解除が始まっていましたが、特に自動車はかなりの交通規制が行われていたようで、いつもの休日と比べても交通量は少なかったです。今年は7月14日が火曜日だったので、月曜日を休めば4連休。大企業ではそもそも休業日となっているところもあったようですし、そうでない場合も有給休暇を取得しバカンスにでかけていたパリジャン・パリジェンヌも多かった模様。ここ数日はその前の週と比べて落ち着いていたように思います。
フランス留学自体は2年目ですが、パリで夏を過ごすのは初めてなので例年の様子は正直よくわかりません。ただ、話を聞いている限りは例年のこの時期はバカンスにでかけて人が減った分を大勢の観光客が埋め合わせているようで、海外からの観光客がほとんど来られない状況となっている今年は一層人の少なさが目立つ年となっているようです。
決行されたパリの花火
また、夜23時過ぎからは、エッフェル塔周辺で毎年恒例となっている花火があがりました。映像を見るとエッフェル塔の周辺からのみならず、塔自体からも花火があがっており、非常に綺麗です。
フランスの花火は(以前カナダで見た花火もそうでしたが)、音楽とともに打ち上げられます。また、例年は7月といえど夜は20度前後まで気温が下がるため、非常に涼しく花火を見られるという点で、日本の夏の蒸し暑い夜の花火とはかなり違った楽しみ方となります。
本来ならば革命記念日(あるいはその前日)はフランス全土で花火があがるようですが、今年はCOVID-19の流行を受け、市長の判断で花火が中止されたところも多かった模様。パリでは花火は決行されましたが、例年よりも規模を縮小して行われたようで(通常2時間のところ1時間弱)、5000人以上の集会が禁止されていたということもあり、エッフェル塔周辺は封鎖が行われました。

近隣一体が封鎖されたので、花火はテレビ中継で…というのが狙いだったようですが、多少言っただけではルールを守らないのが当たり前。日本語で調べた範囲では無観客での花火という紹介をしている方がほとんどでしたが、よくよく調べてみるとセーヌ川沿いなどでは人々が花火を見ようとこれでもかと集まっていたようです。
Malgré l'interdiction au public, les ponts de la Concorde, Alexandre III et des Invalides sont bondés, tout comme les quais de #Seine, pour ce feu d'artifice du #14juillet. pic.twitter.com/DfXonihp6N
— actu Paris (@actufrparis) 2020年7月14日
Revivez le bouquet final du feu d'artifice de Paris, filmé depuis l'École militaire 🎆 pic.twitter.com/TfMr1BDZCi
— BFMTV (@BFMTV) 2020年7月14日
封鎖自体はきちんと行われていたようですが、封鎖エリアの外で人々が密集しているという結果になりました。屋外ということもあってかマスクを付けている人も少なかったようで、一気にCOVID-19の感染が広がった可能性もありえます。数日後に感染者数が爆発的に増えていないことを願うばかりです。
増加傾向にある感染者
というのも、現時点でフランス、及びヨーロッパの感染者はすでに増加傾向。フランスでは外出制限の解除を段階的に進めており、国境についても6月中旬からシェンゲン圏の国々に、7月1日からはヨーロッパ外の14カ国(日本を含む)に対して開放しましたがこの調子でうまく国境をまたいだ移動を再開できるかもわかりません。
ヨーロッパよりもウイルスの感染が広まっていないという基準で選ばれた14カ国ですが、その中の一部の国(オーストラリアやセルビアなど)ではここ最近急激に感染者が増加しています。そのため、このリストは(予定通り)近いうちに見直しがされる模様で、場合によっては現時点でシェンゲン圏への入国が認められている国も入国ができなくなる場合もあるようです。Le Mondeの記事によれば、パスポートコントロールを伴わない移動が認められているシェンゲン圏内の国境超えに際してもパスポートコントロールが例外的に行われているようですし、現時点ではシェンゲン圏内でも国境を超えた移動は控えたほうがよさそうというのが個人的な印象です。
また、6月末にブリュッセルでの本会議で全ての国がこの14カ国のリストに合意したにも関わらず、EU諸国間で足並みが揃っていないようです。例えば、ハンガリーはこれら14カ国に対する国境の開放を拒否しているようですし、オーストリアやスロベニア、クロアチア、スロバキアなども最近感染拡大が相次いでいるバルカン半島の国々(ブルガリアやセルビア、コソボなど)からの入国者に対して陰性の検査結果を提出するよう求めているとのこと。
フランス国内の状況を見ると、つい最近患者一人あたりの再生産数が再び1を超えたほか、一部の地域では10万人あたりの感染者数が警戒値を超えた模様。新規感染者もこちらの記事で紹介したとおり依然1日平均500人程度で推移しており、感染が収束する気配は見えていません。
ディズニーランド・パリが7月13日から年間パスポート保持者向けに、15日から一般向けに営業を再開するなど、外出制限の解除と経済活動の再開が徐々に行われているフランスですが、政府はこの状況に危機感を示しているようで、できるだけ早い段階で「屋内の」「公共の場で」マスクの着用を義務とするべく準備を整えている模様です。報道によれば、8月1日頃にはこのルールがフランス全土で適用される見込みだとか。
一部の自治体では似たようなルールが独自に実施されており、例えばパリ近郊のサン・トゥアンでは7月13日の月曜日から実施されています。ここの場合、役所などの公共施設に加え、商業施設やホテルの共用部分なども含めて誰でもアクセスが可能な屋内空間でのマスクの着用が義務付けられています。フランスとスペインに挟まれた小国、アンドラでも同様のルールがすでに適用されており、違反した場合には罰金100ユーロ(約1万2千円)が課されるほか、再犯の場合は最大1000ユーロまで課される模様です。
守られないマスクのルール
とはいえ、個人的にはこれらのルールが効果的とはあまり思っていません。
公共交通機関の車内ではすでにマスクの着用が義務付けられていますが、パリの地下鉄の車内を見ていると現時点でマスクを適切にしていない人も多いです。そもそもマスクをしていない人、マスクを下におろしている人、友人との会話や電話のタイミングでマスクを外す人、鼻が高すぎて隙間が大きく空いている人など、形は様々ですが、今までマスクをする習慣がなかった分抵抗がある人もまだ多いのかもしれません。
とはいえ、ラッシュアワーのパリは2,3分おきに地下鉄がやってきますし、その全ての乗客がマスクを適切にしているかどうかをチェックするというのはあまりにも現実的ではありません。政府としても対応に困っている状態なのかもしれないですが、再びの外出制限という可能性も否めないと思っています…。